測量会社が拓く発掘調査の未来?

今、私は金沢市の北、能登半島の付け根の海岸地帯で、幸せな発掘調査に従事している。神奈川県に在住し、厚木基地に飛来するF18やP3Cを見上げて暮らしている私が、なぜ石川県で古代の遺跡を掘っているのか?それは新幹線の延伸に関わっている。金沢まで開通して脚光を浴びた北陸新幹線は、京都までの延伸が急がれている。石川・福井両県では、そのための発掘調査も急ピッチで進められており、両県教委傘下の調査組織は対応に追われている。県の調査組織が手一杯で、市町村に声がかかり、それも手一杯で民間企業に声がかかり、民間の調査員も払底し…そうした玉突き衝突が幾重にも生じて、ついには私のような者にもお声がかかった、という次第である。

私に声をかけてくださったのは、社長自らも操縦桿を握るという、航空写真測量のプロフェッショナル企業である。ということもあって、私と組んで調査に当たる調査補助員にも、測量士の方が配属されている。世界各地の計測プロジェクトに参加されていたという、文字通り「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」の世界のベテランである。発掘調査の仕様書には、考古学系の調査員の卵がその任に当たることになっていたが、遺跡調査員系の人材が払底していることから、完全にオーバースペックといえる、測量のプロが代行する形である。この方の他に、私と同年輩の温厚な(これは現場の和を保つのに大切)施工管理技士、という贅沢な三人体制で調査を開始した。その後、市教委の配慮で設計変更となり、調査補助員として本来なら主任調査員に当たれる方が充当されたので、現場は贅沢の上に贅沢が重なった、申し訳ないくらい幸せな発掘調査体制となっている。

さて、仕様書では、土層のセクション図や遺物出土状況の微細図などは、調査補助員が紙を使って手実測することになっていた。しかし、せっかく測量のプロがいるのである。そこで、市の担当者の方と相談すると、全てデジタルな手法で計測しても良い、ということに落着した。

そういうわけで、大半の図面が、その日のうちに出来上がっている。調査日誌に、その図面が貼り付けてある。図面台帳や遺構台帳、遺物台帳などのデータ管理もしてもらえる。という、殿様発掘をさせていただいているのが、現在の私の境遇である。不満を言ったらバチが当たるかもしれない。しかし、強いて欲を言うと、それでもまだ測量会社本来の中核的技術を使いきれていないと思う。一つだけ例をあげると、なぜかフォトスキャンを活用していない。うまく使えば、調査がもっとスピーディーになるし、精度も上がる、というか、三次元情報を三次元で残せるはずだ。

これは仕事の出し方にも大きな問題があるのだが、プロ集団である測量会社が発掘に参入しても、従来のアナログな手法に寄り添ってしまって、折角の本領を発揮しきれていないことが多い、という現状がある。今回は、極めて理解ある(というより、むしろ積極的な)クライアントのおかげで、柔軟に対応していただけているから軋轢はなかったが、そうでない場合でも、多少の衝突は覚悟の上で、測量会社のテクノロジー、工学的でシステマティックな手法を、存分に取り入れていく方向に、どんどん推し進めて行って良いのではないだろうか。そうした方が、結局はみんなが幸せになれると思うのである。

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